存在という影響力
夕方、利用者の家族から電話がありました。
「明日のデイケアには『行かない』って言ってるんですが、私は行って欲しいと思っているんです。」
しばらく入院していたこともあり、再開の決心がつかず、外出が億劫になっているこの事。ひとまず訪問して、お話を聞くことにしました。
「デイケアは良いと思っているけど、まだ早い。まだ、落ち着かない。」
何かが腑に落ちていない様子。
私は、腰を据えてお話をさせて頂くことにしました。
「落ち着かないのですね。」
少しだけ、物忘れが出始めた彼は、自身の感じた違和感について語ってくれました。
「髪を切りに行きたいんだ。庭の手入れもしたい。もちろん、リハビリもしたいよ。でも、一つ気になるのは、あれとこれとが重なるんじゃないかと思ってね。重なって、誰かのご迷惑になりはしないかと。自分のやりかけたことが途中で途切れるんじゃないかと、気にかかる。」
この答えは、家族が持っていました。
「大丈夫よ。重ならないよ。中途半端にならないよ。」
「でもね。気にかかってしょうがないんだよ。」
彼は、漠然とした不安を、抱えたままでした。
そこで、視点を変えてみることにしました。
「実は、今、デイケアのスタッフが、私からの電話を待っているのですよ。皆さんは、『来る事ができるくらいお元気になられる日』を心待ちにしているのです。皆さんを幸せにする影響力があるんですね。」と伝えました。
存在への承認と、期待。
「腹が決まったよ,。明日から行くよ。」と、凛々しい目で答えてくれました。